肺炎球菌ワクチンの予防接種について(その種類とお金の話)
更新 2016.09.17
厚生労働省の平成 26 年 人口動態統計月報年計(概数)の概況の10頁によると、日本人の死亡原因は、がん・心臓病・肺炎の順となっています。平成23年より肺炎が脳血管疾患におきかわり死亡原因の第3位となりました。高齢化社会を迎えた日本にとっては、肺炎による死亡は増加傾向にあり、日本人の死因として無視することのできない状況となっています。
こうした状況をうけて、厚生労働省は平成26年10月1日より肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)を定期予防接種(※)としました。肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)は一度接種すると5年間は効果があるとされています。
厚生労働省は平成26年10月より5年間かけて高齢者全員への接種を目指しており、現在は経過処置の段階となっています。平成31年度からは65歳のものを接種対象者としていますが、その時点で最初の接種より5年を迎えたもの(おそらく、その時点で70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる者)については、「経過措置対象者の接種状況や、接種記録の保管体制の状況等を踏まえ、改めて検討する。」としています。
ちなみに、
平成28年4月1日から平成29年3月31日までの期間に厚生労働省が肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)の定期接種の対象として指定しているのは、以下の方となります。
1.平成28年度 経過措置の対象となる方
対象者 生年月日
65歳となる方 昭和26年4月2日生 ~ 昭和27年4月1日生
70歳となる方 昭和21年4月2日生 ~ 昭和22年4月1日生
75歳となる方 昭和16年4月2日生 ~ 昭和17年4月1日生
80歳となる方 昭和11年4月2日生 ~ 昭和12年4月1日生
85歳となる方 昭和 6年4月2日生 ~ 昭和 7年4月1日生
90歳となる方 大正15年4月2日生 ~ 昭和 2年4月1日生
95歳となる方 大正10年4月2日生 ~ 大正11年4月1日生
100歳となる方 大正 5年4月2日生 ~ 大正 6年4月1日生
2.60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方
となっています。
ところで、肺炎球菌ワクチンは1種類だけではありません。日本で承認されている肺炎球菌ワクチンは、
「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」
と
「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」
の2種類あり、公費助成で接種できるのは、「ニューモバックスNP」のみです。
65歳以上に対する肺炎球菌ワクチンの日本での承認は、ニューモバックスNP23が1988年、プレベナー13は2014年となっており、プレベナー13の承認はつい最近の話です。
プレベナー13の利点は肺炎球菌が常在している鼻や咽頭粘膜の免疫を誘導、活性化することです(ニューモバックスNPには粘膜の免疫を誘導する作用はありません)。また免疫が得られる期間でいうと、ニューモバックスNPが5年間、プレベナーは不活化ワクチンであることから、終生免疫となっています。
両者間の比較では、肺炎球菌の予防効果は「プレベナー13」の方が「ニューモバックスNP23」よりもやや高いと評価する専門家の意見が多いようです。もちろん、同時接種はできませんが、時期をずらして両者を併用するとより効果が高い(ただし、日本人でのデータはない)といわれています。
厚労省は、プレベナー13の公費助成を認めていませんが、その理由は以下です。
・沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの高齢者における臨床での予防効果に関する評価は確立していない。
・近年、ワクチンで予防可能な肺炎球菌血清型の疫学データは変化している。
つまり、データの蓄積が少ないので、まだ認めていないということのようです。
ちなみに、弘前市在住のかたが、当クリニックで肺炎球菌ワクチンの接種を希望された場合
「ニューモバックスNP」
公費助成対象となる方(65歳、70歳・・) 5,000円
自費(65歳以上で対象者外の方) 8,000円(税込)
「プレベナー13」
自費(65歳以上の方) 10,000円(税込)
となります。
そこで、現在、66歳。昨年に肺炎球菌ワクチンを公費助成で接種しなかった方 はこう考えるかもしれません。
「自費で払って肺炎球菌ワクチンを受ける必要ある?いまさら馬鹿くさい」
現在極めて健康で、持病もなく、タバコも酒もやらないという人にとってはその答えはありません。健康に対する考え方は人それぞれだからです。
ただし、目一杯、タバコをすっていて呼吸機能の低下している方、心臓病や腎臓病のある方、糖尿病、癌、肝硬変などで免疫機能の低下している方などに対しては、「接種して下さい」といいたいです。
「70歳になるまで待つべし!」
それは、ちょっとやめた方がいいです。現在70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳以上の方が公費助成をうけているのは、あくまで経過処置です。平成31年以降は65歳だけと決定しています。
以下は、合理的と思われる肺炎球菌ワクチンの摂取方法です。
①これから初めて肺炎球菌ワクチンを接種する高齢者で65歳以上の基礎疾患がある方
プラベナー13を先に接種→半年~1年後にニューモバックスNPかプラベナー13を追加接種
②65歳以上でPPSV23を接種したことがある基礎疾患のある方
ニューモバックスNP23 から1年以上あけて、プラベナー13を追加接種
③問題となる基礎疾患がない65歳以上の定期接種対象者
ニューモバックスNPを打った後、効力が弱くなる前にプラベナー13を追加接種
④施設入所者には、ニューモバックスNP(PPSV23)が、実績が豊富。
(※)定期予防接種と任意予防接種について
予防接種には、法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」があります。
接種費用は、定期接種は公費ですが(一部で自己負担あり)、任意接種は自己負担となります。
市区町村が実施する予防接種の種類や補助内容の詳細については、市区町村などに確認しましょう。
定期の予防接種による健康被害が発生した場合には、救済給付を行うための制度がありますので、お住まいの市区町村にご相談ください。
任意予防接種によって健康被害が起こったときは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済制度があります。
参考までに、「プレベナー13」と「ニューモバックスNP23」を併用することについて、厚生労働省は「問題はない」という見解を示しています。
↓