抗原キット普及は新たな時代の到来なのか？（新型コロナウイルス、インフルエンザＡ／Ｂ）
更新 2023.06.09
抗原キットの普及で患者さんの行動が変化？
2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行しました。これまで無料だった新型コロナウイルス感染の検査や外来診療費が自己負担となります。この影響かどうかはわかりませんが、最近、自らが抗原キットを購入し感染を自己判断するという患者さんが増加している印象があります。
「抗原キットの結果で、コロナ陽性がでたから診察してください」という患者が、ボチボチ出始めていたのです。
現在、新型コロナウイルス＆インフルエンザＡ／Ｂ判定可能な抗原検査キットは簡単に入手可能で、市内の薬局やドラッグストア、果てはアマゾンや楽天などの通販でも販売しているようです。青森県のホームページでも薬局などでの抗原定性キットの販売強化を積極的におこなっているようです。
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/yakumu.html
「もしも、発熱したら・・・」というときのために抗原キットを準備しておくという患者さんも増えるかもしれません。
このことについて是か非かを申し上げることではないのですが、有益な点と懸念される点について考えてみました。
抗原キットで自己判断することの有益性
1．早期の検出と対策:
抗原キットにより、患者さんは自宅で簡単に感染の有無を確認することができます。感染初期だと陰性と判定されることを十分に周知の上ですが、もし陽性と判定された場合、早期に自己隔離や感染対策を始めることができます。これにより、感染の拡大を防ぎ、他の人への感染リスクを低減することができます。
2．医療資源の節約
軽症の患者が自己判断で感染の有無を確認し、必要な場合にのみ医療機関を受診することにより、医療資源の効率的な利用が可能となります。重症化しやすい患者に対して、より適切なケアを提供することができます。
3．健康意識の向上
自己判断のための抗原キットの普及により、一般の人々の感染意識や健康への関心が高まることが期待されます。感染予防の重要性や適切な対策についての情報を得る機会が増えるため、個人と地域全体の健康意識が向上する可能性があります。
4．検査に簡単にアクセスできる
抗原キットは、場所と時間を選ばず、検査可能です。真夜中の自宅でも検査できます。検査施設への移動や待ち時間を減らし、結果を素早く得ることができます。これにより、感染の早期発見と迅速な対応が可能となります。
抗原キット普及により懸念される点は？
1．正確性の問題
抗原キットは、正しく用いれば概ね正確な結果になると思います。しかし、キットに問題がなくても、検体採取方法の未熟さ、或いは誤った使用方法によって、誤判定となる可能性があります。偽陰性（実際に感染しているにもかかわらず陰性と出る）や偽陽性（実際に感染していないにもかかわらず陽性と出る）となるかもしれません。もしも、自己判断での感染判定が正確でない場合、感染の広がりや重症化のリスクが増える可能性があります。
2．適切なケアの欠如
自己判断によって、軽症の患者が医療機関を受診しない場合、症状の進行や合併症のリスクが増える可能性があります。また、自己管理が不適切な場合、感染の拡大や他の人への感染リスクが高まることも懸念されます。
3．感染状況の把握の困難さ
軽症だった場合は、医療機関を受診せずに自己判断で済ませることが増えることが予想されます。これにより感染流行の正確な報告や追跡が困難になります。保健所や医療機関が感染の拡大状況を考慮し、効果的な対策を講じるためには、正確なデータと情報が必要です。自己判断は浸透すると感染の実態を把握することが困難になると予想されます。
新たな時代の到来なのか？
この３年間は国民、医療機関、政策者の３者が新型コロナウイルスに振り回されっぱなしだった３年間でした。
かつて今ほど、医療サービスが充実していない時代においては、発熱や風邪があっても医療機関を受診せず、自力で治すというのが普通でした。
いまは、薬局やドラッグストアでそこそこ効果のありそうな風邪薬が多種多様販売されています。（私の好きな漢方薬もいっぱいありますしね！）
こうした状況に抗原キットの普及が加わると、私たちは感染流行に対してより積極的に向き合えるようになると思います。
そうなると、今後のインフルエンザや新型コロナウイルスの流行の状況把握と診療、対策などは大きく変化していくかもしれません。
感染流行に振り回されることなく、賢く、冷静に取り組めるようになるのは決して悪いことでないので、うまく運用できるようになれば良いと思います。
ただし、こうした状況になっていくことが、全体のコンセンサスなのかどうかは、いまのところ私にはわかりません。