「短命県返上」のヒントになるか?外来での栄養指導から見えてくる人と人のつながりの重要性。


 以前のブログにて「栄養指導は薬と同じと考える」ということを述べましたが、この薬も効果がある人とない人がいます。

 処方される本人自身が栄養指導に「興味がある」、「興味がない」ということは一つの指標にはなりますが、それ以外で実はもっと重要なことがあります。

 

 高血圧で通院している高齢男性患者さん。降圧剤を処方していますが、慢性疾患指導として減塩の重要性についてもたびたびお話しています。その内に御本人も次第に食事のことが気になってきたようで、あるとき「一度、栄養指導を受けたい」という話になりました。

 その後、3日間の食事記録を記入してもらい管理栄養士に指導してもらうこととなりました。その後、数回の栄養指導を行っているのですが、食事記録の方は殆ど変わっていないようです。「食事記録をみると栄養指導をしても、あまり変わってはいないようですね。」と・・・決して咎める口調で話したわけでは無かったのですが、いろいろと話を伺うとどうやら、同居している家族との折り合いがあまり良くない。

 食事はお嫁さんが用意してくれるらしいのですが、自分から食べたいものを提案できるような状況ではないようです。なので、食事指導の際に、お嫁さんが同席してくれるようなことはまずありません。高血圧で通院していることもはっきりとは伝えてないようです。「血圧の食事療法のため、嫁さんに病院まで来てくれ、とか、塩分の少ない食事を準備してくれとはとても言い出せない」ということでした。

 

 雰囲気からはなんとなくですが、昔は色々な出来事・・・嫁舅問題?があり・・・長い年月を経て関係がすっかり悪くなってしまったのではないかと想像できます。

 こういった方への栄養指導はとれも難しいです。

 

 かと思うと・・・・

 

 会社の健診でヘモグロビンA1cの高値を指摘された30代男性。体重は100kg以上で、タバコも吸っています。恐らく糖尿病を発症していると思われましたが、やはり検査の結果はⅡ型糖尿病の診断でした。

 検査結果説明の外来当日。たぶん検査の結果を一人で聞くのがよほど不安だったでしょうか。奥さんと小さなお子さんも一緒に見えられました。 そこで、「今回の検査では、糖尿病であること。これから長い治療が必要であること」を告げると、奥さんが「ああ・・・やっぱり!」という顔をされました。それと同時に奥さんの顔は、「これまで野放図に食べていた夫の食事を管理し、この糖尿病(この腹を?)をなんとかしなければ!」という決意に充ち満ちていました。この患者さんは、ヘモグロビンA1cの値がかなり高かったので、食事指導だけでなく、薬物療法も必要でしたが、治療が始まると、数ヶ月でヘモグロビンA1cの数値はみるみると低下。体重も10kg以上の減量でき、顔も引き締まってきました。タバコは減量中であり、治療はまだ過程ではありますが、かなり順調に経過しています。

 こうした方への栄養指導はとても張り合いがあります。

 

おそらく、上記のようなことはよくよくあることです。

人はだれでも病気になるとは思います。病気になったときこそ、その人のサポーターがいるかいないか、これはとても大事な問題です。人と人とのつながりは、長寿・健康を考えていく上で、以前考えていた以上に重要な要素なのだと考えるようになりました。

 

 ですので、最近は、慢性疾患の指導においては家庭環境を確認し、本人がどのような家庭環境にあるのかを確認することはとても重要なのだと考えています。

 

 先日、石川雄一先生のことをこのブログで御紹介しましたが、彼のご子息・・・石川善樹先生がTEDX UTokyoで「人と人とのつながりがあることが長寿の秘訣である」ことを述べられています。「つながりがある」ことの長寿への影響度は大きいようです。

影響度の順から言うと、つながり>タバコ>酒>運動>肥満の順になるそうです。意外な結果には驚かされましたが、上記のような経験を踏まえてみれば、なるほど!とも感じ取れます。

 

 「短命県返上!」キャンペーンの青森県ですが、いまいろいろな健康、健診事業をたくさん行っています。

 このなかでは悪性腫瘍、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常など病気を起こす要素を排除していくことに重点が置かれています。しかし、視点を変えて、健康・長寿を「つながりがあるかどうか?」という点から考えると新しい問題解決の糸口が見えてくるかもしれません。医師もこのような視点を持つべきではないかと考えます。

 

↓に石川善樹先生の動画をリンクしました。参考にされてください。