腰部脊柱管狭窄症でもない、閉塞性動脈硬化症でもない、下肢静脈瘤でもない、・・・その先にある間歇性跛行・・・・サルコペニア!


 先日、当院を受診された80代の男性患者さんの話です。

診断名は「閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)」

ということで、他のクリニックからの紹介で受診されました。

 

 患者さんとお話しながら記憶を辿ってみると、この患者さんは、わたしが以前勤務していた病院において、同じ病名で診察したことのある患者さんでした。閉塞性動脈硬化症の治療には、運動による治療、お薬での治療、カテーテル治療、手術などがありますが、当時のわたしの判断では,動脈硬化による下肢血流低下の状態がそれほどひどい状態でもなかったので、お薬での治療ということになりました。また病変部位が大腿動脈ということもあってカテーテル治療の必要性は無いと判断したように思います。

 今回の受診の理由は以下のようなものでした。

 ここ数年、段々と歩けなくなってきていた。このため去年、病院で大腿動脈の血流障害部位に対してカテーテル治療を受けた。しかし、思ったように歩行できるようになっていない。これから、どうしたら良いか?というものでした。

 「足の血圧を測定する」という簡単な検査を行ってみると、その血圧が治療直後の数値よりも確かに低下しています。

 患者さんに治療後の経過を聞きました。

「治療直後は凄く良くなったのが、段々と悪くなってきましたか?」

ときくと・・・

「そうでもない」

とのこと。

カテーテル治療して、下肢の血流状態は随分と良くなったのに、歩行状態はあまり良くならなかったようです。そして、いまは治療直後より足の血圧は低下しているのに、それに伴う変化はないようです。

何か、ヘンな状況です。

大腿動脈、膝窩動脈の脈を触れてもそれなりに触れることはできます。

試しに、リハビリ室で歩行させてみました。

するとわかったことが二つありました。

一つは「歩隔」といって歩行したときの足の左右の幅が広い。

これはバランスの悪い人にみられる歩き方です。高齢になるとバランス感覚が低下するので、安定性を保とうとしてこのような歩き方になります。歩隔の広い歩き方は、歩行効率が悪くなるので同じように歩行しても疲れやすくなります。

 

もう一つは、200m位歩行していると、「左右の太ももの前面が痛い」と訴えるようになりました。これは、閉塞性動脈硬化症で見られる歩行障害とは明らかに異なります。また、腰部脊柱管狭窄症で見られる痛みとも異なります。

 

 かなり専門的な話になりますが、一般に歩行していて歩けなくなることを跛行といいます。歩くと次第に痛くなってくる。休むとまた歩けるようになる。という状況を間歇性跛行(かんけつせいはこう:他には「間欠性跛行」とは「間欠歩行」とか言います)

 閉塞性動脈硬化症での間歇性跛行は、腓腹部(ふくらはぎ)が最初に痛くなることが一般的です。

 腰部脊柱管狭窄症での間歇性跛行は大腿側面歩行時の痛みは、腰や大腿外面など、身体の体軸方法に一致する痛みがでます。

 さらに、下肢静脈瘤では、歩行していると下肢全体がはれぼったくなり重くなって歩行が辛くなります。

 

 さて、今回の患者さんの痛み、歩行障害の原因となる場所は「太ももの前面」です。

 

 その理由を明らかにするためにCT血管造影を施行しました。CTでは、カテーテル治療を行った右大腿動脈にはステントという血流を改善する道具が埋め込まれていましたが、そのステントはキチンと開通していました。ただし、その上下に別の狭くなった病変がありました。今回の血流低下はこの新しい病変によるものと考えられました。

 問題は、CTでの血流評価ではなく、太ももの筋肉にありました。

なんと、太ももの筋肉が ぺらぺら に薄くなっていたのです。太ももの裏側の筋肉はそれなりに残っていたのですが、明らかに前後で異なります。

CTでの結果から、これが原因だと確信が得られました。

こうなると、神経や血流がどうのこうのという問題ではなく、筋肉そのもののの問題です。

リハビリテーションでの筋力トレーニングの問題です。

 

じつは、こういった状況にはずっと以前から、気づいていたのですが、最近増えつつあるように感じています。いわゆる

 

「サルコペニア」

 

という問題です。この患者さんでは、大腿前面の筋肉萎縮なので、おそらくサルコペニアなのでしょう。

 

わたしは長年、閉塞性動脈硬化症の治療に携わりカテーテル治療を行ない、歩けなかった患者さんを歩けるようにしてきました。そのなかで、最近ぶち当たるようになった問題の一つがこの「サルコペニア」です。

 

サルコペニアの解決には、リハビリテーションを通じての時間と手間がかかります。また、栄養学的な見地からもいろいろと考える必要があります。栄養学として、には

「リハビリテーション栄養学」

という世界があります。

 

実は、わたしが、開業したらやりたいな~、と思っていたコトの一つが、この「リハ栄養学」です。いずれ、リハビリと栄養学とを考えつつ、クリニックが立ち向かうべき、問題として考えていきたいと思っています。

 

大分、話が大きくなり、さらに大きく脱線してしまいました。いずれにしても、一人の患者さんを診るといろいろなことを考えさせられる・・・ということでまとめておきます。

 

のだクリニックは、将来的にリハビリ部門を立ち上げたいと考えています。ただ、システムを作るのにはもう少し先になりそうです。

 

ちなみに、この患者さんについては、ひとまず元気をだしてもらおうということで、漢方での治療を開始しました。

経過をみて、患者さんの希望に合わせて治療方針を考えていきたいと思っています。