放射線科同門会参加 新しい驚異的な放射線治療・・・BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)


 「医師の紹介」のなかでも述べておりますが、私は日本医学放射線学会の放射線診断専門医かつ、日本血管造影インターベンショナル学会認定専門医です。(だいぶ変わり種ではありますが・・・)ですので、同門会は放射線科学研究科に所属しています。放射線科は大きくわけると診断学と治療学(さらに核医学のこともある)とに分かれています。

 10月15日、その放射線科の同門会に出席しました。つい数ヶ月前まで大学病院に勤務していたため、参加者の顔ぶれについてはそれほど久しぶりというわけではないのですが、開業してからの道のりを考えると随分経ったような気もします。

 今回は前教授が退官された直後で、目下のところ後任教授が不在・・・・・ということも関係しているのでしょうか?いつもより参加者の少ない同門会となりました。

 同門会では、博士号を授与された教室員の講演、および前教授の特別講演があった特別講演が催されました。

 教室員の講演は時間遺伝子の話および肝臓のカテーテル治療に関する新しい治療法など先進的な講演で興味のある話でしたが、前教授の講演はさらに格調高く興味のあるものでした。前教授は放射線治療医です。

 

 講演は「ホウ素中性子捕捉療法」という新しい放射線治療についてでしたが、これは「がん」に対する最も先進的な放射線治療のお話です。

 原理はなかなか難しいのですが、がん細胞に加工した「ホウ素」を取り込ませたうえで、その範囲に熱中性子を照射すると、ホウ素は熱中性子を捕獲してリチウム原子に変化、ついでにヘリウム原子(α線:アルファせん)が発生します。このとき発生したアルファ線の高いエネルギーを利用してがん細胞を殺傷するという治療法です。(α線というのは中学3年の理科の教科書にもでてきますが、覚えておいででしょうか?)α線は10-14マイクロメートル(マイクロはミリの千分の一)しか及ばないことから、がん細胞にのみ分布させることができれば、正常細胞への影響はほとんどありません。その結果。正常細胞をほとんど破壊することなく、腫瘍細胞のみを選択的に壊死させることのできる、という夢のような治療法です。

 実際のところはがん細胞のところまでホウ素を運搬する方法がこの治療のキモです。ホウ素を「かご」にいれたものや、アミノ酸にくっつけたものを点滴静注して、がん細胞への濃度を高めてやります。治療効果はこれまでの放射線治療の常識を覆すもののようです(下図)。もちろんすべてのがんに有効というわけでなく、脳腫瘍、悪性黒色腫、頭頚部がんなどで優れた成績が得られているのですが、ホウ素の運搬方法を工夫することによってさまざまながんへの治療応用が期待されています。

 

 日本は、ホウ素中性子捕捉療法の分野では世界のトップを独走しています。実は日本は、ホウ素中性子捕獲療法以外にも、重粒子線治療、陽子線治療などの技術についてもやはりトップクラスです。

 「日本は世界唯一の被爆国」でありさまざまな分野で、「核」や「原子力」という言葉に特別な感情を抱きがちです。しかしながら、こと医療分野においては「原子力」や「放射線」の技術を駆使して、人間を助けるために上手に利用してしまう・・・日本人の奥深さは本当に凄いことだと思います。

 

 下記に臨床例とリンクを張っておきます。