更年期女性の高コレステロール血症


 「健診でコレステロール値の異常を指摘されました」ということで、当院を受診される方が最近ポツリポツリといらっしゃいます。大抵は更年期といわれる年代の女性です。これは閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することが原因だといわれています。

 

 一般に閉経前の女性はコレステロール値が異常になることは殆ど無く、動脈硬化にはなりにくい。これはエストロゲン(女性ホルモン)が女性の血管を守っているからと言われています。

 すなわち、エストロゲンは、肝臓でのLDLコレステロール(コレステロールのうちの一つでいわゆる悪玉コレステロール)の代謝を促進させることで、LDLコレステロールを低下させる作用があります。LDLコレステロール値が高くなると脳卒中や狭心症や心筋梗塞の原因となる動脈硬化を進行させます。

 

 さて更年期女性が「高コレステロール血症」を指摘された場合はどうすればよいか? 一つは脂質異常症だからということで、コレステロール低下作用のあるお薬、すなわちスタチン製剤の処方を直ちに開始するという考え方があります。スタチン製剤は動脈硬化の進行を抑える薬剤という意味では強力です。もう一つには、食事や運動などの生活習慣を見直し、コレステロールが上昇する原因を可能なだけ排除していくという考え方もあります。個人的にはどちらも「あり」だと思います。

 しかし、「高コレステロール血症をきたした閉経後女性のすべてに対してスタチン製剤が必要なのか?」という疑問も浮かびます。NIPPON DATA 80(上の図表です)という日本人を対象とした疾患基礎調査の結果からは「閉経後の女性の高LDLコレステロールが動脈硬化のリスクとなるのは、「加齢」に加えて「糖尿病」「喫煙習慣」という要因が重なった場合であり、これらの要因がなく、LDLコレステロールが高いだけなら、すぐに動脈硬化や動脈硬化による心血管疾患のリスクであるとはいえないことがわかっています。くすりでコレステロールを低下させることも大事ですが、やはり食事の見直しと教育、運動の習慣化、糖尿病の原因となる肥満の改善、禁煙指導なども、同じくらいか、それ以上に重要なことだと考えています。

  

 ところで・・・・「食事療法はイヤ」、「運動は嫌い!」、「糖尿病は気にしない」、「タバコを止める気は無い」、という方はどうすればいいか? いや、どうしようもない。「だったらせめてスタチンくらいは服用してもらいましょうか」ということになります・・・。ちょっとばかりネガティブな気持ちにはなりますが・・・。

 

 まあ、スタチンが高かった時代ならともかく、いまやプラバスタチン5mg1錠の最低価格がジェネリック品で12.4円(先発品で45円)という時代。「ゴチャゴチャ考えずに処方してしまった方がよい」という、割り切った考え方もあります。なれど、スタチン服用中に「クレアチニンキナーゼ」という筋肉が壊れた時にでてくる酵素が上昇している方もいます。これは「横紋筋融解症」という怖い副作用におよぶこともあります。

 

 医師とは病気に対して適切なくすりをうまく使うというのが本来の仕事です。こと生活習慣病に関しては「生活習慣の改善」という原則を患者さんに提示教育し、それがうまくいかないときには、おくすりで補っていく・・・という当たり前のことを、当たり前にやるだけ、と考えればよいのでしょう。

 

 ブログとしては、当たり前過ぎるお話で、面白くもなんともありませんね・・・・、しかし当たり前のことができる医者になりたいと、切に思っています。